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2006年9月17日 (日)

第9話「別れの時」

今日仕事だというのに衝動的に空港まで来てしまった俺は、もう後戻り出来ない状況だった。空港から地元までは高速を使っても2時間近く掛かる。現在の時間は8時前どう考えても仕事には間に合わないと思った俺は即職場に電話を掛ける。病欠・・・まあある意味恋の病とでも言うところだろうか。

ユキに聞くとなんでも関西空港から北京に帰るらしく一旦松山空港から関空へ行くらしい。

俺は即座に飛行機のチケットを購入し同じ便で関空まで見送る事を決めた。

1分でも1秒でも長く居たいとそう思えた。

飛行機に乗り込み隣の席を替わってもらいさながら新婚旅行気分で関空を目指した。

関空に着くと、北京便が来るまでの間は自由行動らしく、二人でショッピング街をブラブラしていた。関空内の庭園で二人でベンチに腰掛るユキが耳元で囁く。

ユキ「カイお願いあります。いいですか?」

カイ「何?北京には行けないよ。パスポートないからw」

ユキ「ちがいます。私の腕を噛んでくれませんか?」

カイ「え?」

なんでも聞いたとこによると、中国では大好きな彼氏には彼女は噛んで欲しいって事だった。俺は初めての体験だったが、動物でも親が子をアマガミするのがあるがそれに似た感覚だろう。俺は優しくユキの腕を噛む。

ユキ「もっと強く噛んでください。もっと・・・もっと・・・」

カイ「でも、痛いよ・・・いいの?」

ユキ「いつまでも、カイ忘れないから・・・ずっとこの痕見ればカイ思い出す出来るから・・・」

カイ「わかったよ。」

チカラを入れて噛む・・・ユキの顔が少し歪むが、痛みをこらえていた。

ユキ「ありがとう・・・謝謝」

カイ「トウプーチィ」

ユキ「カイ中国語上手になったね。」

カイ「ユキの日本語程じゃないよ。」

二人とも自然に笑みがこぼれ出した。楽しい時間は早いもので出発の2時間前になった。

ユキ「カイ。アリガトウ。また日本来るよ。」

カイ「解った。待ってるよ」

出国ゲートからユキが出て行く。俺はそれを遠くから見ていた。微かにユキは涙を流していたが、俺に向けてくれたのはいつもの優しい笑顔だった。

出国ゲートから出て暫くすると携帯が鳴る。ユキからだ。

ユキ「カイいまどこですか?ユキ出たゲート近くガラスあるはわかりますか?」

カイ「わかるよ。どうした?」

ユキ「そこ来てくれますか?」

ふと目をガラスに向けるとそこにはユキの姿があった。

カイ「わかった。こっちからも見えるよ。」

関空は出国ゲート通ると免税店が有り、免税店はゲートの真下ぐらいに位置している。

そこからユキを見ながら更に30分ほど会話をする。

ユキ「もう時間です。・・・・北京カエリます。・・・再見」

カイ「・・・・・再見・・・・」

俺の瞳から涙が零れ落ちる。ユキの姿が見えなくなり、そこにじっと立ちすくむ。

よかった・・・本当にここまできてよかった・・・・

松山空港へ戻る飛行機までは時間があったが、今まであったユキとの思い出で

申し訳ない気持ちと楽しかった思い出が走馬灯の様に頭の中を駆け巡った。

地元に帰るとなんだか、家に帰るのも寂しいと思いいつもの「シュウの店」に足を運んだ。

今日は一人では眠りたくない。そんな気分だった・・・

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